長政研レポ−ト vol.32号 魂祭号 議会報告
<平成21年6月25日県議会経済警察委員会>
(長坂)(独)科学技術振興機構(JST)が各都道府県あたり5億から30億円の予算で地域産学官共同研究拠点整備事業を行うが、今議会で科学技術振興条例の話もあり、タイミングとしては最高の事業になる可能性がある。主に建物や設備に対するものと聞くが、本県ではどの分野を考えているか。
(商工観光労働部)この事業は文科省が平成21年度補正予算において総額695億円の予算措置を行ったものだ。全国47都道府県に産学官の共同研究拠点を整備しようというものだが、具体的にはまだ要領等が決まっていない。基本的に土地は地域が用意、建物・設備はJSTが建設した上で、地域が運営管理を行う。この拠点施設における具体的な研究分野について、現在庁内で検討を進めるとともに、工業技術センタ−や県内各大学と意見交換を行っている。県としては、地域資源を活用した既存産業の質的向上と、新エネルギ−、省エネなどの環境対策や少子高齢化社会対応などにおいて、本県の将来を支えるような新事業を創出するための研究拠点としても位置づけていきたい。
(長坂)予算規模が5億から30億円程度ならば、本県の農産物資源の活用が今後賑わいを生み出して雇用問題にも結びつくと考えられるので、緒についたばかりの工業技術センタ−の食品開発室を拡充し、食品開発研究センタ−、すなわちフ−ドサイエンスセンタ−といったものに展開させていくのがふさわしいのではないか。
(商工観光労働部)食品開発・加工については本県にとって進めるべき重要な研究分野である。引き続き積極的に強化をしていきたい。今回の拠点施設においては、その機能についてどのように盛り込んでいくか、関係機関等と現在協議をしているところで、今後検討していく。
(長坂)近畿大学生物理工学部と県工業技術センタ−、メ−カ−等で昨年9月に共同研究開発したサッポロ飲料からの清涼飲料「とろり梅」が、当初好評であったのに、今3月で早くも生産・販売が打ち切りになったと聞いた。今後一切店頭に上がらないのか。
(商工観光労働部)本年3月を持って生産・販売中止ということで、今後店頭に上がる予定は今のところない。現在、別の商品で紀州産の梅を活かした健康系飲料が製造されており、また引き続き新しい商品も考えているとのことだ。
(長坂)せっかく大手のサッポロという全国ブランドで出した商品が半年で終了したわけだが、実際県としては県産品として販売促進の努力を行ったのか。そのPRのために多少在庫を持たなかったのか。県は食品加工を長計の重点分野の1つと位置づけている割に取組みが余りにも淡白過ぎないか。
(商工観光労働部)「とろり梅」については、企画段階から県が関わってきて、その商品に県章の添付を認め、また県のHP上で紹介するなど支援を行ってきたが、大手のサッポロ飲料の販売力でも、大体3ヵ月から半年のスパンで流行の波があると聞く。残念ながら、「とろり梅」は販売中止になったが、サッポロ飲料では、紀州産の梅を使った商品が出ている。サッポロに限らず、紀州の産品を使ってもらえる機会の情報を捉え、どんどん取組んでいく。
(長坂)研究に携わった方にとっても非常に残念な結果だ。サッポロもついてくれたのだから、もっと積極的に食らいつくような県としてのビジネス戦略が必要だ。次に5月に大阪の食の博覧会に行った時、和歌山県コ−ナ−は一般的に売り方が地味で、他県のような「におい」で寄せるくらいの器量を持って、もっと店頭で厚かましいやかましい呼び込みをして、「これをどうしても見てくれよ」といった熱を伝えてほしかった。加工食品の1つの分野として、特に観光客にアピ−ルでき、お客さんに子や孫に買って帰りたいと思わせるものが、お土産のお菓子だと思う。「紀州特産品絵巻」というパンフで県産品の推薦品を見たところ、玄人好みの懐かしい逸品は確かに多いが、大衆向けというか、長野や北海道のような子どもや若者向けするものが少ないなと思う。県産として全国的にも有数の代表的な果樹である梅、柿、ミカンはもちろんのこと、お菓子にしやすい桃、キウィ、ブル−ベリ−、イチゴなどの特産物も和歌山県にはたくさんある。お菓子とかジャム等に活用しやすい素材、フル−ツ食材を使った、健康にも良くて美味しい加工食品づくりへの取組みを県が主導的に仕掛けていく時期ではないか。
(商工観光労働部)ご指摘の果樹については、「果樹王国和歌山」といわれるほどで、これは地域の強み、地域資源だ。これらを活かして取組んでもらうことに関しては、昨年「わかやま中小企業元気ファンド」を創設し、既に昨年度の採択事業の中でもいくつか取組んでもらっている。今年度は、地域の中小企業者だけの発想でなく、農林水産事業者と中小企業者が一緒になった新しい取組みに対して、「農商工連携ファンド」を用意しており、その活用についてもPRしていきたい。
(長坂)品物自体のパッケ−ジ、包装紙のデザインもなんとも奥ゆかしく地味だ。デザインをもっと斬新な目立ったもの、「買いたい」と思えるものにしていくべきだし、そういうことをメ−カ−や販売元にも注文をつけてもらいたい。昨年から「プレミア和歌山」ということで和歌山優良県産品を選定しているが、販売等で目立った動きが出てきているか、販売にあたってどんな工夫をしているか。
(商工観光労働部)昨年策定した第1回目で181品目を推奨選定した。首都圏等における専門展示会や物産展等に積極的に参加した際には、まずは「プレミア和歌山」の制度をわかってもらうことも大事なので、商品と一緒に制度も専用コ−ナ−を作り、農林水産部と一緒になって売り込みに努めている。せっかくこんな制度をつくって売っていくのだから、どれだけの効果があり、どのように次につながるか、そういったことは非常に大事であり、今後そういうことも進めていく。
(長坂)このプレミア和歌山は県の積極的な取組みの表れだと思うので、これを本当に活かした、生きた制度にリーダ−シップをとってどんどん展開してほしい。
(長坂)海の季節、遊漁船、漁師の船、プレジャ−ボ−ト、貨物船等の混在の中で、昨今沿岸海上で衝突事故等が少なくないが、沿岸を航行する船舶のマナ−啓発はどうか。
(県警本部)警察としては、「和歌山県遊泳者等の事故防止に関する条例」に基づいて、主に遊泳者の安全確保を行うための対策を講じており、プレジャ−ボ−ト等、船舶に対してもル−ル遵守等、安全航行について呼びかけている。県下各署では、沿岸部へのパトロ−ルの強化と共にマリンレジャ−連絡協議会や海域等レジャ−事業安全対策連絡協議会等を介する広報啓発活動を行っている。水上警察隊では、警備艇と水上バイクを有効に活用して沿岸の安全確保に努めている。警察航空隊でも、レジャ−客の多い海水浴場等の上空から事故防止広報を行っている。県警察が主管する(財)水上安全協会では、ラジオ放送やホ−ムペ−ジ等を活用して水上安全を呼びかける広報啓発活動を行っている。
<平成21年3月13日県議会予算特別委員会一般質問>
1.
健康と産業振興について
(1) がん対策について
(長坂)本県では、がんによる死亡者は年々増加して昭和54年以降、死因の第1位が続いている。全国的にもがんによる死亡率は上位である。自然豊かな、空青き水清き和歌山県でなぜがんによる死亡率が高いのか疑問に思うが、県のがん対策についての取組みは?
(福祉保健部長)平成20年3月策定の和歌山県がん対策推進計画に則り、がんによる死亡率の減少及びがん患者の生活の質の向上に向けた総合的ながん対策を推進することとしている。具体的には、がんに関する正しい知識の県民への普及啓発の実施、肺がん等の発症予防に資するたばこ対策の推進、がんの早期発見のための市町村がん検診への支援、がん診療体制の整備・充実を図ることを目的としたがん診療連携拠点病院の機能強化、患者・家族に対する支援として緩和ケア提供体制の確保と相談支援機能の充実、がんの発生状況や治療情報等を集積・解析するがん登録の推進など、和歌山県がん対策推進委員会及びその下部組織である主要ながん毎に対策を専門的に検討するワ−キンググル−プのご意見等も踏まえながら、がん死亡率減少等に資する効果的ながん対策に取り組んでいる。
(長坂)がんによる死亡率を下げるためにはやはり早期発見、早期治療だと思う。がん検診の受診率アップのための対策は?
(福祉保健部長)がんによる死亡率減少に向けては、早期発見のためのがん検診の受診率向上が重要であり、和歌山県がん対策推進計画においてもがん検診受診率50%を目標としている。未受診者に対する受診勧奨を強化し、受診機会を拡充するための休日等における健診に取り組む市町村に対して補助制度を設けるとともに、県民に対してがん検診受診の必要性を啓発するなど、受診率向上に取り組むこととしている。
(2) 心肺蘇生法について
(長坂)AEDの普及もお蔭様で進めていただいている。地区の自主防災訓練時にも住民の方からもっと身近に24時間使用できるAEDがあればと指摘もいただいた。しかしAEDがあっても心肺蘇生法が出来なければ宝の持ち腐れだ。心肺停止して遅くとも5分以内に心肺蘇生を施すことが重要だ。先進取組県である岩手県では一家に1人は心肺蘇生が出来るほどまでに進んでいるが、本県においては、心肺蘇生法の県民の理解、そして普及実践は進んでいるのか。
(福祉保健部長)平成20年10月現在で約800台のAEDの設置が県に報告されている。県としては、病院前救護体制を充実強化するためには、多くの県民がAEDの操作を含めた心肺蘇生法を習得することが重要であるという認識のもと、県民の方々を対象とした講習会はもとより、県及び市町村の保健師等を指導者として養成する講習会の開催や県ホ−ムペ−ジ上にAEDの使用方法等を詳しく解説した動画情報を提供するなど取組んできた。市町村消防本部でも住民等を対象とした救命講習会が行われている。今後とも、市町村や民間企業も含む関係機関と適切に連携しながら県民参加の救護活動の普及啓発活動を推進していく。
(3)(独)医療基盤研究所薬用植物資源研究センタ−の活用について
(長坂)日高川町の当センタ−はかつて近畿地方における薬用植物栽培の中心的役割を担っていて、最後の野口所長も長く当センタ−を拠点に薬草栽培で和歌山県の活性化を目指しておられた。夏みかんの乾燥させた皮から採れるキジツは今でも和歌山県の特産物だ。センタ−には今なお400種類に及ぶ薬草が栽培されている。本県の「食と健康」を考えた時、こんな貴重な研究資源はないのではないか。新宮市等各地域で地域の観光に結び付けるべく、薬草料理、薬膳への取組みも行われているが、こうした方面にも活用できるのではないか。和医大等高等研究機関による今後の研究次第で医療の分野にも活かせるのではないか。県としてこの薬用植物資源研究センタ−の利活用についてどうお考えか。
(企画部長)平成19年度から日高振興局のほうで地元と協働して、薬膳料理とか薬草を使った商品開発だとか、あるいは観光に活かせないかというような取組みをやっているところだ。地域にある資源を最大に利用して地域おこし、まちづくりをやっていくことが私どもの方針なので、こうした振興局の事業成果とか、地元の動きを見ながら考えていきたい。
(4)農商工連携と人材育成について
(長坂)農産物の産出額で全国6位の宮崎県は、平成3年より食品加工に目を向けた、農工連携発祥の地であるといえる。「今後は生産から販売まで、川上から川下までが一連の産業として発展していかなければならない。だから農商工連携は1つのキ−ワ−ドだ」と東国原知事も力説していた。また熊本県では地元の崇城大学が産学連携で、農商工連携の中核を担う人材の育成に乗り出している。食品メ−カ−などで商品開発から販売促進まで一貫して対応できる人材を育成するのが狙いで、地域の農産物を原料に、発酵や醸造技術を生かした機能性食品の開発をテ−マに育成するというのだ。平成21年度から講義や実習をスタ−トさせるのだが、大学院生や社会人を人材育成事業の対象にする計画で、中小企業が多い食品メ−カ−にとってまたとない人材の確保と育成のチャンスになる。本県も県工業技術センタ−食品開発室を核研究室にして、近畿大学生物理工学部等大学の先生に中心的役割を担っていただいて、大学生や院生にも入ってもらって、食品加工関連企業を巻き込んで、生産・加工・流通・販売まで一貫した農商工連携のための人材育成を図ってみてはどうか。
(知事)人材育成については、「都市エリア産学官連携促進事業」や「地域結集型共同研究事業」を通して、和歌山大学や近畿大学生物理工学部をはじめとする大学等高等研究機関との共同研究を実施する中で、和歌山の企業や地域資源を熟知した人材を輩出している。従前から、工業技術センタ−及び農林水産総合技術センタ−では、食品加工業者などの企業の研修生を育成したり、地域単位での生産者に対する研修や、県内の大学生をインタ−ンシップなどを通して、実践的な人材育成をしている。県内企業や大学などで構成される研究コンソ−シアムを結成し、具体的な研究開発プロジェクトの中で熟度をあげ、次世代の地域産業を担う人材を発掘・育成してまいりたい。
2.イノシシ対策について
(1)くくりわな等による捕獲の強化について
(長坂)近年イノシシが山のふもとはおろか、住宅地にまで下りてきて大暴れすることが本県でも少なくない。人間の里山での活動域の縮小や、放置された耕作放棄地や竹林の増加でイノシシの出没が増加し、人里近くまで下りてきて、果樹・稲・野菜・イモ類等の農作物の被害が出ており、県内の被害総額も毎年1億円以上、農家の生産意欲まで奪っているのが実情だ。電気柵で田畑を囲むにも多大なコストがかかり、「オリ」での捕獲も、イノシシも学習能力が高くて、一度オリに入ると二度目からなかなかそのオリに入らず、好物のぬかをいっぱいオリの中に置いておびき寄せても、オリに入るどころか、かえってぐるりの畑を荒らしまくる状況だ。県も第2期和歌山県イノシシ保護管理計画を策定するに当たり、パブリックコメントの募集を今年早々行ったと聞く。2007年4月に行った直径12cm以内というくくりわな規制の解除も検討されていると聞いている。一般のハイカ−や散歩に来る人などがわなにかかってしまうこともある。きちんと領域を明確にして、くくりわなの規制を緩和して最大限活用できるようにしていただきたいが、どうか?
(農林水産部長)有害捕獲については、くくりわなの12cm規制はなく、農地周辺など地域を限定して実施されている。県内全域で実施できる狩猟では、現在くくりわなの規制を受けており、市町村や農林業団体、猟友会、さらにはパブリックコメント等から、農作物の被害防止のためイノシシを一層捕獲できるよう規制解除を求める多数の意見をいただいている。イノシシ保護管理計画の策定に当たっては、鳥獣保護法に基づき、わなに氏名等を表示することに加えて、設置場所には注意標識を立てることや、わなの見回りを徹底することなど安全対策を盛り込み、今後公聴会等で意見を聴取し、環境審議会に諮ってまいりたい。
(長坂)そもそも和歌山市の名草山には以前イノシシの生息は無かったはずだ。今では700頭以上生息していると聞く。誰か飼育していた人が山へ放ったのではないかと考えられる。そこで、イノシシ飼育者に対し、管理を徹底するよう強く指導していただきたいが、どうか。
(農林水産部長)イノシシの飼育者に対しては、家畜伝染病予防法に基づく立入検査を通じ、イノシシの健康保持や衛生管理についての指導を実施しているところであり、今後さらに適正に飼育管理するよう指導してまいりたい。
(2)食肉流通について
(長坂)すさみ町では特産のイノブタ肉が高い人気を博し、先日も「ミ−トサミット」で、イノブタ料理の試食が好評だったと聞く。今回の第2期和歌山県イノシシ保護管理計画案にも「捕獲個体の利活用」としてふれられているが、イノシシ肉を捕獲者の自家消費にとどまらず、広く食用に供することが出来るよう、具体的に流通・販売システムを構築いただきたいが、いかがか。
(知事)イノシシやシカの捕獲頭数は年々増加しており、単に捕獲・駆除するだけでなく、地域資源として活用し、「和歌山産イノシシ肉、シカ肉」として売り出すとともに、熊野古道などの本県観光資源を視野に入れながら、観光と連携を図りつつ、食肉の利用拡大に取り組んでまいりたい。食肉の処理方法や衛生管理基準を定めた県独自の「和歌山ジビエ衛生管理ガイドライン」を今年度中に策定することしており、また、これまでの地域での伝統料理と併せ、ジビエ料理としての利用を図るため、和歌山市内のホテル等で試食会を開催するなど、新たな需要拡大に向けた取組を進めてきたところだ。21年度からは、食肉処理施設の整備に必要な財源を補助する他、イノシシ肉、シカ肉のPRや販路開拓を積極的に推進する。
3.
災害医療について
(長坂)自助、共助のもとでの自主防災でも防ぎきれなかった重傷者、重病者のケアを行うのが災害医療体制だ。災害拠点病院は阪神大震災後の1996年に都道府県による指定が始まり、全国で582ヵ所、本県でも8ヵ所ある。厚生労働省の通知では、「水、食料、医薬品、医療機器等を備蓄し、災害時に診療機能が維持できる」のが要件だ。昨年でも全国約9千の病院のうち、「震度5強で建物が無傷、震度6強で倒壊しない」という国の耐震基準を満たしたのは半数に過ぎず、災害拠点病院でも6割にとどまったそうだ。本県における8つの災害拠点病院の施設整備状況と、医療機器等の落下・転倒・飛散防止対策について聞かせていただきたい。また、大地震等災害発生時に、本県の災害拠点病院において医師や看護師の確保は大丈夫か。
(福祉保健部長)8災害拠点病院のうち日赤医療センタ−、有田市立病院、国保日高総合病院においては、施設の一部が未耐震だ。日赤医療センタ−においては、平成22年度完成予定の新本館建築工事に伴い、全施設が耐震化される予定となっている。残る2病院についても早期に耐震化を図るよう指導を行ってきた。医療機器等落下・転倒・飛散防止等の室内対策については、今年度より医療法に基づく立入検査時に、各災害拠点病院の実情を確認してきたところで、いずれの病院も室内対策に順次取組んでいる状況だ。医師及び看護師の確保については、災害が発生した場合は、被災地内の災害拠点病院を支援するため、県内の被災していない地域の災害拠点病院や危機発生時の相互応援に関する基本協定を締結している近畿2府7県、厚生労働省に対して、医療救護活動の中心的役割を担う災害派遣医療チ−ム、DMATや、医療救護班等の派遣を要請し、出来る限り多くの医療従事者を確保して、医療救護活動を進めることとしている。
4.
和歌山県の教育について
(1) 家庭教育と親学について
(長坂)本県において平成20年度の学力テストも体力テストも全国の低位であるという結果が出た。全国学力テストでは全科目の総合順位が小学校36番目、中学校40番目だ。全国体力テストでは中学校男子が46位、同女子が44位、小学校男子は30位、女子は28位とほぼ平均並みだ。秋田県は学力テストで全国一、体力テストでも全国トップクラス、今や「教育の秋田」といわれている。私は学力と体力には強い相関関係があると思う。聞けば、秋田県は家庭がしっかりしていて、朝食・夕食を両親・家族と規則正しく取るということで、子どもたちの情緒や精神状況に安定をもたらしているのではないか。また秋田の子どもたちは塾に通う率も極めて低い分、家で予習・復習をきちんとしてテレビを見る時間も少ない、ということは睡眠もよく取れているのではないかと思う。地域の祭りといった行事の中への参加も多いと聞く。日頃地域・家庭の中で温かい目を向けられる環境にあるというところに、学力・体力ともに健全に成長している原因があるのではないか。昨今日本では一般的に先生・学校に責任を転嫁しすぎる家庭に問題があるのではないか。家庭教育、そして親学の大切さについての所感を聞かせていただきたい。
(教育長)家庭教育については、平成18年度末に改正された教育基本法の第10条において、「保護者が子どもの教育について第一義的責任を有する」こと及び「保護者に対する学習の機会、情報の提供、その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない」ことが、新たに明記された。議員指摘のように、子どもの健全な成長のためには、家庭において基本的な生活習慣を確立することや子どもを温かい目で見守る親や地域の存在が大切であると考えている。そこで、『家庭教育手帳』の配布やテレビ放送による情報の提供、学習機会や相談体制の充実、インストラクタ−の養成などを行い、家庭教育の支援に努めている。一方、家庭の教育力の低下に加え、家庭教育に関する学習機会を設けてもそれに参加できなかったり、身近に相談できる人がいなくて孤立したりする親の増加も見られる。地域全体で子どもを育てる仕組みとして、「きのくに共育コミュニティ」の形成に取り組む中で、家庭教育の充実に努める。
(2)幸福度について
(長坂) OECD加盟国のうち回答のあった24カ国を対象に、ユニセフが2007年度に発表した15歳の子どもの幸福度調査だが、「自分は孤独だと感じるか」の問いに対し、「はい」と答えた割合が日本人は29.8%でトップ、最低が2.9%のオランダだ。「自分は不器用だと思う」と答えた割合も日本が18.1%でトップ、オランダは6.9%だ。幸福度調査No.1はオランダ、日本人は約3人に1人の15歳が孤独感を抱き、自分に自信も持てていない子が少なくないのだ。日本ではかつてみんなで草野球をやったり、鬼ごっこをしたりといった集団で遊ぶことが多かったと思うが、今は少人数やひとりでゲ−ムをして遊ぶことが多い、それに「あの子はあんなゲ−ム機を持っているのに自分はない」といった横並びを求める、すなわち「同じでないと満たされない」といったところに孤独感を感じるのではないか。幼少の頃から市民性を持たせる、社会の中の一員であるといった意識を植え付けることによって、ひいては相手のことを思いやることができ、自分の気持ちを抑えるべきところは抑えられるような人間性が成長するのではないか。物質的な豊かさに左右されることなく、まず心理的な安らぎの場所と感じられる家庭の大切さとともに、楽しくみんなと温もりを持って協調して生きられる市民性教育の必要性についてお尋ねする。
(教育長)平成20年度の全国学力・学習状況調査の結果によると、「自分にはよいところがあると思うか」という質問に対し、県内の中学校3学年の肯定的な回答は、全国平均と同様の約6割にとどまり、自己肯定感に関して気がかりな状況にある。本県では、子どもを権利と義務を持つ主体と捉え、市民であることに誇りと責任を持たせながら、社会とのつながりの中で活躍できる子どもの育成をめざす「市民性を育てる教育」を推進している。子どもたちが、他者や社会とのかかわりを深める中で、自分の存在や生き方に自信を持たせることが重要であり、今後、地域共育コミュニティの構築とも結び付けながら、「市民性を育てる教育」を積極的に進めていく。
(3)スポ−ツ強化について
(長坂)昨年の北京オリンピックで339名の日本選手団の中で本県出身者はいても県内で競技活動をしている人は皆無だ。県内にメジャ−なプロスポ−ツチ−ムもない。和歌山県民は今をときめく一流選手のプレ−に直接触れる機会すらまずない。即戦力の社会人一流選手が本県でプレ−出来る環境があれば、県民にもスポ−ツへの親近感・認識が高まり、目標が出来て、スポ−ツ熱がいやおうにも盛り上がってきて、ジュニアの育成にも大きな影響を与える。そんなトップ選手がいればトップレベルの指導も身近で行ってもらえる機会が多くなる。子どもに夢と希望を与える。現役の一流アスリ−トやトップコ−チを多く受け入れてくださる企業にメリットを享受いただける、例えば、企業の冠をいただいた公式大会を県で支援するといった企業スポ−ツ支援事業を行うとか、何かしらのインセンティブをお渡しすることは出来ないものか。加えて、たとえスポ−ツ選手、コ−チとしての現役を退いてもそのままその企業で仕事が出来るような環境が確保されればと望むものだが、教育長いかがか。
(教育長)平成20年10月に「和歌山県競技力向上対策本部」を設置し、本県の競技力向上対策に取り組んでいる。平成21年度から新たに「トップレベル・スポ−ツクラブ活性化支援事業」を創設し、トップレベルの競技力を有するクラブに対して、企業・行政・地域住民の支援によるクラブの運営組織・財政基盤の確立を目指すこととしている。「トップ強化コ−チ招へい事業」として、中央競技団体の優秀なコ−チ、競技者等を招へいし、県内のジュニアやその指導者を対象に、よりレベルの高い技術の習得や競技力の向上を目指す各競技団体が開催する研修会に対して支援している。県内で実施される全国大会等の開催に当たっては、従前より、各競技団体に対して補助しており、現在、和歌山県競技力向上対策本部長として、知事自ら先頭に立って、優秀な指導者及びトップレベル競技者の確保に向け、県内各企業への採用依頼などを積極的に努めている。
<平成21年3月16日県議会経済警察委員会>
(長坂)「ほんまもん体験」を利用した修学旅行誘致について、2005年度に1校、06年度に5校、07年に5校、08年に13校の誘致実績があるが、どんな体験が人気か、評価はどうだったか。
(商工観光労働部)備長炭炭焼き体験、本まぐろ養殖体験といった職業体験、日置川、古座川でのカヌ−体験、また、串本でのスノ−ケリング体験が人気だ。評価については、和歌山に行くという部分では最初は6割近い生徒が「行きたくない」との評価だったが、帰った後のアンケ−ト調査の結果では、9割を超える生徒から「よかった」という評価をもらった。また、先生には、生徒の自主性や積極性を養えた、といった評価をいただいた。
(長坂)今後の修学旅行誘致戦略をどう考えているか。例えば、タ−ゲットはあくまで首都圏なのか、あるいは内陸県を海浜地域へ導くのか、都市部を高野熊野まで導くのか、小中学校はどうするのか。
(商工観光労働部)一般的に修学旅行の日数は、高校生で3泊4日、中学校は2泊3日、小学校は1泊2日であり、首都圏では高校生、中京圏・関西圏では小中学生をタ−ゲットにして戦略を立てていく。埼玉県、岐阜県といった海のない地域にとっては、和歌山の海は魅力的であり、都会の学生にとっては、和歌山の大自然は魅力的なものだ。今後ともそのような方面に積極的にセ−ルスを進めていきたい。