長政研レポ−ト vol.29号 青嵐号 議会報告
<平成20年3月7日(金) 一般質問>
1.
食品加工による新産業創出について
(長坂)新年度予算ではお蔭様で、県工業技術センタ−に食品開発室を設置いただくということだが、この際スタッフを増強して、付加価値の高い機能性食品の開発を実施して、「新食品産業」を創出していただきたい。それには「農水」のものづくりと「商工」のものづくりをリンクさせた取り組みが欠かせない。ぜひ新潟大学で各学部横断的につくられたフ−ドサイエンスセンタ−のようなものを、この食品開発室を核にして県、試験研究機関、県内各大学、そして企業とともに創っていってほしいと思うがどうか。この食品開発室をどう発展させるのか。
(知事)新長期総合計画の中で、「食品加工」は5つの重点分野の1つとして取り上げ、本県の果樹などの農産物資源の豊富さから「食品加工」分野に注目して、これを先行的に取組んでまいりたい。最近、国においても、「地域資源活用」とか「農商工連携」がキ−ワ−ドになっていて様々な施策が展開しつつある。本県でも、新年度から食品開発室を置いて農林分野とものづくりとの融合を目指す。それから健康ブ−ムや高級志向に対応した機能性食品や食品素材などの新たな分野への研究開発に取組もうとしている。研究資材も装備して、わが工業技術センタ−が県内の中小企業の方々が大いに利用するという意味で他県と比べても自慢できる存在であると思う。その中小企業者がこれから重点になっていくような商品づくりに向け、十分な共同研究ができるように予算をつけた。今後具体的な共同研究としても、県立医大、和歌山大学、近畿大学など県内大学をはじめ、関連企業、農協、食品研究機関等と共同して、新たな食品産業の創成に向け取組んでいく。
(長坂)健康への効用を表示することが認められた食品、すなわち特定保健用食品、略して「特保」だが、今般の新長期総合計画にも初めてうたわれた。本県においてもぜひ恵まれた農水産物資源からいくつかの「特保」を必ず生み出せると思うが、この「特保」を取得していく取り組みもこの食品開発室の大きな役割と考えてよいのか。
(知事)県では平成17年度から県立医大と連携し、柿酢の機能性についてモニタ−調査を実施し、血圧の低下をもたらす可能性があるという報告がなされている。これについても、いくつかの企業ですでにいくつかの商品に対して全国的にプロモ−ションをかけている動きもある。議員指摘のように「特保」も視野に入れた検討を行ってまいりたいし、民間の企業にも大いにがんばってもらって、「特保」について、医学的あるいは栄養学的な見地から、多くの試験デ−タの蓄積をやっていきたい。それによって「特保」のような機能性食品工業がどんどん盛んになることを期待したい。この食品開発室において、産学官の連携を推進する中で、新たな食品産業の形成や、企業の「特保」取得の取り組みを積極的に推進して参りたい。
(長坂)今後の和歌山県のアグリビジネスの発展のためには「健康食」といった分野で県立医大の参画は欠かせない。公私立を問わず、県下各大学に知事から新食品産業創出のために号令をかけていただきたい。(要望)
2.
和歌山県の救急医療体制について
(長坂)最近救急搬送の患者が病院に受け入れを拒否されて死亡にいたるケ−スが全国各地で続発している。全国の医療機関の病床数は減少し、救急搬送される患者は急増している。全国都道府県には救急医療情報システムがあって病院の受け入れ状況がパソコンで示されるようになっている。しかし各府県ともリアルタイムの更新には限界があるといい、的確な病院を選定するにはシステムの改良や、消防と病院が日頃から連絡を密に取るしかないといっている。和歌山県救急医療情報センタ−は、絶えず正確な情報提供ができるような進行管理はなされているか。医療端末が設置されている救急告示病院が絶えず情報更新を徹底すべく指導しているのか。
(福祉保健部長)県救急医療情報システムによる空床情報等の正確な情報提供については、情報が更新されていない医療機関に対しては、1日2回の督促メ−ルにより情報更新を促すとともに、情報システムに登録している医療機関に対して、救急医療に対応できる状況を常時把握するとともに、状況が変わり次第、速やかに情報更新を行うよう依頼を行っている。
(長坂)救急車の出動件数、搬送人数は年々増加の一途をたどっている。平成18年は平成9年に比べると約1.5倍の数にのぼっている。限りある救急車台数であるので、出動件数が多くなるとどうしても救急車の現場到着も遅くなり、一刻を争う重症患者の救急搬送に支障が出かねない状況である。利用者も症状が軽い場合は自分で最寄の医院や病院へ行ったり、早めの診療を受けるなどして救急車の適正運用に理解・協力が必要だ。病院でも、救急車で運ばれてきた人も、病院で診療を待っている人も、同じ患者の立場でトリア−ジ(治療の優先順位)していく受け入れ側の意識も重要だ。県として救急車の適正利用についてどのように啓発を行っているか。今後の救急車での搬送についての県の方針は。
(危機管理監)議員指摘のとおり、救急車出動件数は年々増加し、現場到着が徐々に遅延する傾向にある。これが続けば救命率に影響が出る恐れがあるので、従来から市町村消防本部等と連携して、県民の友や市町村の広報誌等を通じて「急を要しない場合の通報は、救急活動の支障となるので、タクシ−や公共交通機関など他の手段を利用いただくよう」救急車の適正な利用を啓発している。県として、真に緊急を要する方がすぐに救急車を利用できるよう、病院情報提供サ−ビスや利用者の理解を前提とした「民間の患者等搬送事業」の活用と、適切な救急体制の確立に向け、市町村に対し指導・助言を行っていく。
(長坂)全国的に救急告示病院をはじめとする二次救急医療機関が減少しているし、本県でも例外ではない。本県の救急医療体制の中で、病院群輪番制や救急告示医療機関体制は問題なく適切に機能・活用されているのか。
(福祉保健部長)入院治療を必要とする患者を対象とした、二次救急医療を担う救急告示医療機関及び病院群輪番制病院の役割は非常に重要であると認識している。本県においても救急告示を撤回する医療機関はあるが、それぞれの保健医療圏における医療機関間の連携や協力により、現在のところ、救急患者の受け入れに関して支障は生じていないと考えている。
(長坂)他府県において救急搬送のたらい回しが増加の一途をたどる中、和歌山県下は幸い今は問題が起こっていないが、安心はしていられない。救急車の呼び出し件数は増加傾向で、いつか消防もパンクするかもしれない。受け皿たるべき救急告示病院は減少、救急医療現場の人々の「心身疲労」、そして人材確保が困難な病院も少なくない。不安な病根は県下にもはびこっていないかと思う。 他府県のような事態が生じないよう、今こそ将来に向けた安全安心な救急医療体制を今一度再構築・再整備していかないといけないと思うがどうか。
(知事)救急患者の受け入れについては、幸い他県に発生しているような問題は和歌山県には起こっていないが、これはひとえに県内の医療従事者、特に病院勤めの方々の献身的なご努力、ご尽力によるものと感謝しているとともに、この方々の努力だけではいけないと思っている。近年医師不足や軽症の疾病者が二次、三次の救急医療に集中化していることが指摘されており、そうした機関の負担が大きくなりすぎると、今後の救急医療体制の適切な確保が懸念される。新宮圏のように、開業医の方々と病院が協力して、少しでも病院の勤務医の宿直とかを減らしていこうという試みもできてきた。この動きは田辺にもあり、小児科でみんなで協力して盛り立てていこうとしている。医師あるいは看護師の献身のみに甘えることなく、県としてもあらゆる努力をして参りたい。
3.
和歌山下津港について
(長坂)和歌山下津港のガントリ−クレ−ンも週1船のコンテナ荷役のほかに、鋼管等のバラ積み荷役にも利用され、雑賀崎の工業団地に立地された日本石油鋼管鰍燉A入主体に月に2船位のトラフィック(貿易)があるようだ。ある荷主の方が、「中国から見て和歌山県は決して不便ではない。むしろ魅力がある。それに製品が最終的に日本で完成された場合の「メイドインジャパン」の表示は他国向けにも大きなブランド力がある。「食の安全」が問題になって、食品でも日本製というだけで自国のものより重宝がられているのが現状だ」と言われていたそうだ。今和歌山港のヤ−ドにはピ−ク時とはいかないまでも、木材がいっぱい積まれており、たくさんの労働者が忙しくされており、久しぶりに活気を感じた。北米からの輸入材が和歌山港で荷揚げされたようだ。瀬戸内海の港より大阪、名古屋と言った大消費地にも近い利点もあり、元々木材荷役はお手のもの、荷主側も港を1つか2つに絞りたい意向を考えれば、和歌山港も利用促進されれば、木材港としてかつてのように活況を呈してくるのではないか。
今回の新長期総合計画で、前回の長計に比べてずいぶん港湾施策が意気込みも取組みも減退したように感じるが、今後和歌山下津港を本県の発展にとってどう位置付け、利活用促進を図るのか。
(知事)和歌山下津港は、和歌山市、海南市をはじめとする紀北地域の産業の発展に、今後とも重要な役割を果たしていくものと考えている。「陸上高速交通網と連携した効率的な物流機能を整備する」という、前計画の理念を引き継ぎ、今後とも、港湾の利便性向上に資する施設整備を進めていく。また、和歌山港のみならず、他港も含めて、議員指摘のバラ積みにも可能性を探ってまいりたいし、その積む荷物の元になる産業を振興して、出てきた産業の方に和歌山の港を使っていただくこともお願いし、これを前提に国際コンテナ航路を誘致したり、あるいはクル−ズ客船を寄港してもらうよう働きかけたり、いろんな方策を通じてポ−トセ−ルスに努力し、がんばってまいりたい。
(長坂)「ス−パ−中枢港湾への集中」という国策もあって、コンテナ貨物の取扱いには苦戦している和歌山港だが、木材港としてバラ積みの在来船の取扱いとしては昔から定評のあった和歌山港であり、木材あるいは鋼管をはじめとする在来カ−ゴなら他港に負けないといった特徴のある外貿港湾として、セ−ルスポイントをしぼった戦略が重要ではないか。
(県土整備部長)県においては、現在中国航路も視野に入れた、和歌山下津港への新たな、国際コンテナ航路の誘致に向けて、貨物需要を掘り起こすなど努力をしているところだが、議員提案の在来カ−ゴを特徴とする外貿港湾としてセ−ルスすることも、和歌山下津港の発展につながるものと考えている。今後とも、港湾施設の整備に加えて、背後圏に立地する企業へのポ−トセ−ルス、PRに引き続き努めてまいりたい。
(長坂)輸出入取扱いのメインである和歌山下津港本港区周辺の港湾整備の現況と、今後どのような港湾づくりを行うのか。
(県土整備部長)和歌山下津港本港区周辺では、大型船舶に対応した、水深12mの岸壁2バ−スや、コンテナクレ−ンなど、効率的な国際海上輸送に対応した施設が整備されている。今後より有効に活用していくために、臨港道路、防波堤などの整備により、港湾の利便性の向上に努めてまいりたい。
4.
南海本線紀ノ川鉄橋について
(長坂)南海本線紀ノ川橋梁だが、平成15年9月予算委員会、平成16年6月議会の一般質問で取り上げた。企画部長より「南海電鉄は定期検査を実施して、耐震性及び津波の耐久性等、安全性については十分確保されていると報告している」との答弁であった。減価償却資産の耐用年数等に関する省令によると、鉄道用の橋梁は鉄筋コンクリ−ト造りのものが年数50年とされている。南海紀ノ川鉄橋は今年で105年経過し、金属疲労、ピア(橋脚)の劣化ははなはだしいのではないか。それに橋桁の底部も実に浅い構造だ。上流が氾濫して大木が流れてきて橋脚に激突したらひとたまりもないのではないか。昨年8月にアメリカのミシシッピ川に架かる高速道路橋が崩落したが、この橋はわずか築40年であったのだ。一方、南海の大規模複合商業施設「なんばパ−クス」は平成15年に第1期完成、第2期は平成19年4月にグランドオ−プンされた。すなわち南海電鉄は鉄道会社としての企業経営の第一の理念であるべき、大阪府民・和歌山県民をはじめとする乗客の「命」と「安全」を守ることを放棄し、第二義的な表面的に華やかな商業開発の方へ貴重な経営資源を突っ込んだといえるのではないか。南海和歌山市駅周辺は衰退し、かつての賑わいは失せている。実際に橋脚を水中撮影したカラ−コピ−を入手したが、橋脚に亀裂や破壊は見られなかったが、上流側のコンクリ−ト面に5,6cmの剥離がいくつも発見されている。鉄道会社が乗客の「安全」を放棄することは企業としての「使命」を放棄することに等しいと思う。「何も起こらなければ大丈夫」ではすまない。まして東南海・南海地震も近々起こる確率が極めて高いのだ。「県民の命を守る」べき行政も、大惨事がおこってからでは遅く、事前に対応する、これが行政の責務ではないか。今は阪神大震災の悲劇を教訓に地方自らが自立して地域住民の生命の安全を確保していく時代だ。知事、ぜひ南海電鉄に強く働きかけて紀ノ川鉄橋の改築を実行させてほしい。企画部長には平成15年の予算委員会と同16年6月本会議の当時の答弁に間違いはないか尋ねる。
(知事)鉄橋の健全性については、私も県民の「命」と「安全」に関わる大変重要なことであると考えている。南海電鉄からは、東南海・南海地震等の対応について、平成16年から同17年に橋脚の耐震性能評価を実施し、橋脚の安全性が確保できる結果が得られ、平成18年10月には震度5弱以上の地震が到達する前に停止を指示する、緊急地震速報システムを導入したと報告を受けている。しかし今後とも、南海電鉄に対し安全性の確保を徹底するよう強く申し入れを行っていきたい。
(企画部長)平成15年及び同16年の当時の企画部長答弁について改めて確認したが、いずれもその通りだ。引き続き情報収集をしたいと思っている。
(長坂)1.平成15年9月議会予算委員会での企画部長答弁の中の補修というのはどんな工事であったか。どの程度の補強をしたのか。
2.平成12年後半にはすでに南海電鉄の内部的な意思決定機関で2億円くらいの必要な補修を決定していると聞いているが事実か。
3.補修を行うということは南海電鉄も紀の川鉄橋の改築の必要性を認識しているからだ。補修を行ったのは企画部長答弁によれば平成14年頃になるが、その前に橋梁の改築の話が南海側からあるいは河川管理者たる当時の建設省から県側へ説明がなかったのか。
4.県から会社へ紀ノ川橋梁の改築計画があったかどうか事実関係を問い合わせてほしい。南海電鉄内部で紀ノ川橋梁の改築を決定していたのかどうか行政には調査する責務があると思う。
私の手元にある平成12年12月20日付の文書、南海電鉄鉄道営業本部より、南海の関係各社へ、「南海本線紀ノ川橋梁の改築計画について(報告)」という文書が送られているではないか。その中に、「耐震性に欠けた橋梁であり、南海道地震の再現周期も近づいていることから、平成10年7月22日付常務会において、全面改築の方針で詳細設計の実施と河川協議の開始を進めることを可決いただいた」とある。平成10年には会社側は耐震性に問題ありと認めて改築しようと決定しているのだ。続けて、「事業内容の精査による費用最小となる工事計画」「公的補助か助成金の適用」「可能な限りの延命化」等を主眼とし、その後社内関係先並びに河川管理者等と検討・協議を行った」と続く。「今回改築計画の概略がまとまったので、本案により実施設計及び許認可申請準備等を引き続き実施いたしたい」とうたっている。スケジュ−ルは工事開始が平成17年度頃、新橋梁切り替えが平成22年度頃という明確な計画がうたわれている。そして新橋梁への架け替えまでの延命対策として、「より適切な検査・診断と時機を逸しない最小必要限度の補修を行うことで、延命化を図ることとしたい。なお補修概算総額は周期舗装を含め約2億円程度必要だと考えている」と書かれている。当時橋梁改築の重要性を力説された、まさに当事者が今会社の中核を担っている。県から南海へ強く抗議してもいいのではないか。この内部文書を見たら、平成15年、16年の私の質問に対する当局の答弁はうそになるのではないか。平成10年7月22日付で全面改築の方針が打ち出され、平成12年12月20日に改築計画が配布されているということは、それ以前に調査をして認識しているはずだ。県にも当然改築に当たっての相談があったはずだ。それなのに、平成13年から14年に調査・補修をしたと答弁しているのは、その時間的ずれをどう説明するのか。
(企画部長)1番目の補修工事の中身だが、平成13年11月から14年3月にかけて大規模な詳細調査を実施している。上部工についても下部工についても検査をし、それに対して必要な補修工事、ボルトの交換などを行った。2番目の平成12年の内部での問題については、私は承知していない。3番目の問題についても承知していない。4番目の「県から会社へいうべきでないか」ということについては、鉄道事業者の施設に関して法的に県は権限を有していないが、県民の安全・安心に関わる問題だから、南海電鉄から引き続き情報収集をしたい。
(長坂)あいまいな県当局の答弁、南海側の県当局への回答を総合すると、ぜひ調査する必要がある。質問を留保して特別委員会を設置して、なお詳細を県議会の問題として調査する必要がある。府県間道路が大事なように、南海本線も和歌山県と大阪府をつなぐ、和歌山県民にとってなくてはならない交通手段だ。前向きに県が、そして県議会が全体の問題として対処していくよう要望する。
<平成20年3月13日(木)経済警察委員会 質疑抜粋>
(長坂)昨年末和歌山市宇須で起こった1家3人殺人事件に関して、現場家屋は未だロ−プ等が張られて立ち入り規制をしており、時折警察官が巡回している。空家を狙った泥棒侵入もあったと聞く。近隣の居住者によると、警察は「大丈夫」としか言ってくれず、他から噂で「現場家屋に泥棒が入った」と聞かされて、「ぞっとした」そうである。今でも不安で落ち着かない生活をしており、泥棒の件もしかりだが、最小限の情報提供ぐらい近隣の住民に行うべきでないのか。
(県警本部)現場家屋の状況や警戒方法について、近隣住民や関係者の方に十分な情報が提供されていなかったことについて、反省している。今後近隣住民の方々には、現場家屋の状況について的確な情報提供を行うと共に、家屋の処置について、相続人等の関係者に必要な措置を促すと共に、自治体等に対し働きかけを行うこととしている。