<6月定例会>  平成16年6月16日(水) 一般質問
 

1.登録をひかえた高野・熊野世界遺産にかかわる保護管理について

(長坂) 世界遺産の声が盛り上がってくるにしたがって、熊野古道及び周辺に心無いハイカーが増えてきた。熊野古道はいにしえの参拝者が残した数々の物語、道中病にて熊野参詣かなわず、あるいは不幸にして自然災害にあって埋葬された無縁仏、あるいは地蔵などの石仏、石碑、供養塔、多宝塔等が無数に埋もれているといわれるが、なんとそれらが京都・奈良等の一般の骨董市に出ていたり、ネットオークションで売られていたというショッキングな話を聞いた。また那智熊野山系は温帯植物と高山系植物が混生するところだが、近年根こそぎ掘られた形跡があとを絶たない。ともすると経済優先主義になりがちで、どうしても遺産の保護管理がおろそかになるものだが、遺産の保護管理についての現状と今後の取り組みについて、ネットオークションの流れについての調査をお聞きする。

(教育長)世界遺産のコア部分(核心地域)は、文化財保護法に基いて保存管理計画を策定、バッファゾーン(緩衝地域)については自然公園法や条例で保護されている。コア、バッファゾーンを含めた世界遺産としての保存管理計画については、市や町が本年度中に策定する。ネットオークションに係わる調査については、特定が困難であるが、今後地元と連携の上、石造遺物の調査を行うなど、管理方策を検討する。また、現在、三重・奈良・和歌山三県が、訪れる方々に巡礼路であるという特性を理解いただいた上で、守るべき「参詣道ルール」を作成中だ。

(長坂) 植物学者等専門家による植物の生態調査と保護指導をお願いしたいがどうか。

(環境生活部長)希少植物等の分布状況については、平成13年に「保全上重要なわかやまの自然」いわゆる和歌山県レッドデータブックを作成している。この主旨の周知徹底を各種会議や研修会ではかっていきたい。古道周辺にはこれに記載されていない貴重な植物も確認されている。これら地元特有の埋もれた自然資源の調査と保護管理に取り組んでいるNPOや民間団体と協力して検討していく。

(長坂) 世界遺産の地屋久島では地元説明者であるインタープリターが旅行者と同行して自然環境保護の意識を高めている。高野・熊野の地にも観光客の問いかけにわかりやすく答えられる、説明ができるインタープリターが必要であるし、地元の協力もお願いしてはどうか。

(商工労働部長)従来から紀州語り部として登録いただいている皆様に協力を賜っている。いにしえの参詣道を現在まで守り続けてきた地域の人たちの思いと努力を来訪者に伝えるキーパーソンであり、自然保護などのマナーや安全面での指導でも重要な役割を果たす存在であると考えている。さらに養成講座実施で増員を考えている。熊野古道と町石道については、地域の皆さんの協力によって守り続けることができるという意識を醸成していきたい。

(長坂) 休憩所、トイレのさらなる充実をお願いしたいがどうか。

(商工労働部長)誰もが安心して歩いていただけるよう、案内板や道標、休憩所など古道沿いの環境整備について市町村とも連携して支援を行っていく。

(長坂) 世界に誇れるこの遺産を後世に責任を持って引き継ぐためにも、国の内外に発信する知事の決意とアピールをうかがいたい。

(知事)世界遺産となるべき地に大変な事態が起こっていることを知らされた次第で、熊野古道のすばらしい自然の魅力でたくさんの人が来て下さることはありがたいが、その自然が毀損されるという大きな危険性を両刃の刃のように孕んでいることも間違いないので、保存について真剣に対応するための施策をとっていく必要があると考える。

2.里浜づくりについて

(長坂) 本年度の県の新規事業として、人と海辺とのかかわりを強くし良好な海岸環境の創造に資するために開催する地元主導のビーチスポーツ祭典を支援するための事業を進めていただいている。この里浜づくりのポイントは、地域や市民が自分たちの共有財産として自分たちで協働して管理し、環境の保全や魅力的な行事を推進していこうというところで、大きな可能性をもった地域おこしであり、ひとつの「みなとまちづくり」であると思う。私も万葉時代からのいにしえの歴史と風光明媚な景観を誇る和歌浦の地で、文化芸術、福祉、教育そして観光等の活動拠点づくりを、まず長年放置されたままになっている企業の保養所・研修所をお借りする形で、志のある人々と一緒におそうじからはじめて、市民参加、主導でNPOとしての運営を推進していけたらと思う。こうした活動拠点づくりと里浜づくりとがうまくリンクできれば、和歌浦の活性化は大いに進むのではないか。本年度の里浜づくり事業における「’04マリンビーチスポーツの祭典in WAKAYAMA」の具体的内容とコンセプトをうかがいたい。

(知事)8月28日から29日を中心に片男波海岸で水上オ−トバイの日本選手権、ビ−チバレ−、ビ−チサッカ−のようなマリンスポ−ツ・ビ−チスポ−ツの祭典が開かれる。第1回が東京のお台場であり、第2回目の今回も非常に注目性の高いイベントとなる。これを機会に片男波を大々的に売り出すことも大事だし、この活動が水上オ−トバイの適正な運航ということからはじまった、地元の人々の盛り上がりを核にして行われることが非常に意義のあることだと思う。昨年ラッセル・ク−ツ氏が訪れてヨット大会も開かれたし、和歌浦も往時の賑わいを取り戻すきっかけもできてきている。これも大きなきっかけにして地域を盛り上げていきたい。

(長坂) 里浜づくり事業を契機に和歌浦の地に海洋スポ−ツ文化を定着させていくため、県としても継続的事業としてリ−ドしてもらいたいがどうか。

(県土整備部長)「海辺と人々とのつながり」を大切にし、継続的な取り組みとして、各種活動が定着するよう地元関係者と連携をとりながら進めていきたい。

(長坂) 和歌浦、片男波における海洋文化を定着させるためにも、自然と住民とが共生できる護岸は安全面からも整備すべきだと思うが、現在の当局のお考えは。

(県土整備部長)片男波の護岸については老朽化が著しく、改良補修等対応が必要な箇所もあることは事実。護岸前面に広がる干潟は貴重な生物種の生息場所であるとともに、潮干狩りなど水辺環境を楽しむ場所でもある。このため干潟の環境面、利用面、自然災害からの防護面について多面的に検討し、多くの方々の納得が得られるような整備方法を見出していきたい。

(長坂) 里浜づくりにあっては自然環境、住民の生活環境を守っていくための市民の清掃活動やル−ルマナ−の啓発活動は欠かせず、地元先導のボランティア活動に子供たちも入り込んで自ら自然資源を磨く、そして自然学習、遊びながら自然の脅威に対する自衛、防御意識を持つこと、こんなすばらしい道徳教育、社会教育、自然科学教育はないと思うが、里浜づくりをぜひ教育の場としても積極的に活用してはどうか。

(教育長)和歌山市内の小中学校では、理科の授業で和歌浦湾の干潟の生物観察を行うとともに環境美化活動を長年にわたって実施している。その他の県内各学校においても和歌山の豊かな自然や歴史、文化など地域から学ぶ様々な活動を通して、道徳教育、環境教育、防災教育にも活用している。今後一層里浜づくりを積極的に活用していく。

3.生活の手段として欠かせない南海電鉄について

(長坂) 南海電鉄の紀ノ川鉄橋は完成後101年を経過し、先の南海地震や阪神大震災も経験してきたが、昨年9月議会に続いて再度危機管理という面から、来るべき東南海・南海大震災が襲来したときの耐震性と津波への耐久性、安全性を確認したいがどうか。

(企画部長)今年2月27日から3月31日にかけて、南海電鉄において定期検査を実施したが、同社から耐震性及び津波の耐久性等、安全性については充分確保されているとの報告を受けた。JR阪和線紀ノ川橋梁については、紀ノ川大堰の上流に位置することから、大堰の本格運用のための河床掘削により橋脚の強度の問題が生じるため、大堰事業の一環として架け替えを行うものである。

(長坂) 和大新駅についてだが、平成2年に和歌山大学駅設置促進協議会が発足、新駅を核とした新しいまちづくりに取り組まれ、概略設計が平成14年3月に着手され、同15年3月に完了されたとのこと、新駅設置予定地周辺は宅地造成が順調に推移して販売されている。いよいよ和大新駅の必要性も高まる中、先の紀ノ川鉄橋のまさかのときのためにもぜひ和大新駅建設を急いでもらいたいが、現況はどうか。

(企画部長)新駅設置には国の支援がどうしても必要との判断で、和歌山市と協力して、国庫補助事業の「住宅市街地基盤整備事業」における鉄道施設整備に対する補助を平成17年度から受けられるよう国と事前協議を始めているところだ。今後新駅設置をふくめた土地区画整理事業や隣接の大規模開発事業の進捗と合わせて、関係者と調整しながら新駅設置に向けて取り組んでいきたい。

(長坂) 南海貴志川線は利用者側からも存続のためなら値上げやむなしの意見も多い中、何らかの存続への活路を見出せるよう南海電鉄としての理解・協力をお願いしたいし、最悪存続が絶たれたとしても、代替手段として道路渋滞状況も考慮した上での路線バスの運行を考えていただきたい。南海貴志川線区域にバスを運行させるとか、この際近郊を含めた和歌山市内のバス路線を、例えば東西南北それぞれ循環にして、大環状バスで東西南北をつないだりしてル−トを再検討いただくなど、県当局としても交通体系の改善策を南海へ積極的に働きかけていただきたいと思うがどうか。

(企画部長)県としては鉄道の存続を第一義として、議員ご提言の路線バスなどの交通ル−トの検討も必要と考えており、和歌山市、貴志川町の意向を踏まえながら地域住民の生活交通確保の観点に立ち、今後の対応を早急に検討し、合わせて南海への働きかけについても今後共強力に行っていく。